1997年、このようなパーティーゲームをMSXパソコン用に制作していました。
[MSX]マジカルラビリンスRemix大会・決勝 2020年開催のMSXのコミュニティ「南関東MSXユーザーの集い」会合にて行われた、マジカルラビリンスRemixの対戦動画です。
対戦プレイ可!遺産相続バラエティ
父の危篤がきっかけで莫大な遺産の相続権を求め、4兄弟が同じフィールドで激しくバトル。もちろんどの兄弟よりも速くゴールしなければならない。途中、フィールドのあちこちに落ちている5種類のファンキーなアイテムを駆使して、誰もよりも速く勝利をつかもう!
あらすじ
スプルア山脈の片田舎に、貧しい4つ子の兄弟が暮らしていました。兄弟はたいへん仲が良いものの、母親とは幼いころに死別、頼りの父親も最近は具合がよろしくありません。兄弟達は父親に代わり、いつも一緒に畑を耕す毎日です。
ある晴れた日、兄弟の一人が偶然にも畑の中から古ぼけた筒を掘り出しました。中を開けて見てびっくり。それは我が家の古き言い伝え、祖先が戦乱の地から逃れるために保存したと言われる「隠された遺産」のありかを示した地図だったのです。
父親は考えた挙げ句、兄弟達へ言いました。知力・体力・時の運。己の力をすべて出し切り、一番優れている息子一人に我が家の「隠された遺産」を探す権利を与えよう。そして「隠された遺産」を見つけることができたなら、その息子に遺産のすべてを相続する…と。
そのこと以来、父は重い体にむちを打つように、試練の場(なぜか迷路)の用意に没頭しました。日に日に弱々しくなってゆく父の姿を見て、あのときの言葉が『遺言』であることを、兄弟達は本能的に感じて涙が止まりませんでした。
時は満ち、試練の場が完成しました。仲良しだった4兄弟はお互いの根性のあさましさを悟りつつも、醜い争いを始めたのです。
大好きな父のためにと言うか、むしろ自分のために…。
見どころ
4人同時プレイ可能!
MSX2で、4人同時のリアルタイム対戦プレイを実現しました。パーティーゲームはもとより、接待ゲームにもピッタリです。友達がいないときは、かなり人間臭く、そして賢くなったコンピュータがあなたのお相手を。
リアルタイム・アニメーション
最大・秒間30フレームのアニメーション(小さいけど)がゲーム性に大きく関与しています。もちろん4人独立にアニメーションします。* turboR時
戦略性に飛んだアイテム
アイテム数は前作そのままに、重ねがけ(連続)で使うとより絶大な効果を発揮するフィーチャーを追加。『地雷付き落とし穴』、『ニセの旗』、『タバスコ飲み溜め』…等々、あいつに勝つためのテクニックを身につけましょう。
ダウンロード
ソフト名 | マジカルラビリンスRemix |
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ハード | MSX2(VRAM 128KB)、MSX2+、MSX turbo R |
対応OS | MSX-BASIC ver.2.0 以降 |
作者 | Gigamix |
リソース | ディスクイメージ MLR9908.ZIP 2023.12.06, 428210 Bytes |
マニュアル
画像をクリックするとマニュアルデータ(PDF)をダウンロードします。
対応周辺機器
- 各種ジョイスティック/ジョイパッド (アタリ仕様2ボタン)
- MSX用4ポート拡張マルチタップ「PCCM忍者タップ」
- MSX-MUSIC (FM音源)
- Pana Amusement Cartridge(バッテリーバックアップ, セーブデータの保存用)
- MSX標準 16ドット漢字ROM(漢字ROMを搭載しない機種のゲーム内テキスト表示用。または DMシステム2 対応の各種周辺機器を用意することで回避できます)
- MSX-View付属 漢字カートリッジ(FS-A1GT内蔵 12ドット漢字ROM, ゲーム内テキスト表示用)
- MSX-DOS2と拡張RAMカートリッジ(ディスクキャッシュ用)
技術的な話
プログラミング
メインプログラマはGYROさん(後述DMシステム2のBPE圧縮担当)。本当に良いZ80アセンブラコーディングをしていただきました。大学の卒業間際に無茶難題をふりかけてすみませんでした。
サブプログラマはいんふるえんざさん(MSX・FAN誌の「ファンダム」でよく採用されていた、あの人)とごりぽんさんが後述DMシステム2の作り込みと平行して作業を。他にもいたろうさん、Mattyaさん等。迷路作成のアルゴリズムを出し合ったりして、Z80のプログラムに長けている人が多くて助かりました。
ゲーム本体以外のBASICプログラミングは、nf_ban(この記事を書いてる人)。
サウンド
ミュージックドライバーは現在当クラブでメンテナンスしている「MGSDRV」を採用しました。
作曲はOut of memoryさん(MSX・FAN誌「FM音楽館」)と、当クラブのいたろうさんが担当しました。編曲は、nf_ban。
MGSDRVはどなたでもご自由にソフトに組み込んでお使いいただけますので、こちらもどうぞよろしくお願いします。https://gigamix.jp/mgsdrv/
効果音は、ふらわあさん(MSX・FAN誌「AVフォーラム」)。
グラフィック
当クラブのnf_ban(MSX・FAN誌「ほほ梅麿のCGコンテスト」、当時の名義はニューファンキー小林)がメインでやりました。イラスト担当は、らいかさん。
'90年代のアーケードゲームのようなにぎやかさや色遣いを目指したり、MSXではあまり見かけない画作りに挑戦しました。
ゲーム本体はSCREEN4で動いています。その他の画面はSCREEN5。オープニングはSCREEN3・4・5の混成、スタッフロールはSCREEN6のインターレースモードをわざわざ使ったりしました。
ミドルウェア
当クラブのBASICプログラム開発支援ツール「DMシステム2」を採用しました。
MSXでの画像圧縮、マルチデバイス制御、BGM演奏、文字表示で特に役立ちました。
日本語表示はメモリマッパーや各種漢字ROMカートリッジに無駄に対応したりしました。英語表示はプロポーショナルのデザインフォントを作成したうえで、DMシステム2で文字表示。
BGMの演奏はMGSDRV(DMシステム2同梱の機能限定版)が処理していますが、BGMデータ上のテンポを2倍速で作成したうえでゲーム中のBGM再生速度を50%(1/2)にして、ゲーム中の処理速度を稼ぐようなことをしていました。また、Harry Up!(タイムオーパー目前)になるとBGMの再生速度が少し上がるような演出もDMシステム2なら簡単に実現できました。
DMシステム2はどなたでもご自由にソフトに組み込んでお使いいただけますので、こちらもどうぞよろしくお願いします。https://gigamix.jp/ds2/
制作の経緯
MSXパソコン業界の専門誌として最後まで刊行されていた「MSX・FAN(通称「Mファン」)」誌が1995年に休刊になることが読者へ通知され、当時のMSXユーザー・ファンにとって最大の情報源が断絶されることとなり、事態を重く受け止めていました。MSX市場の縮小をみて他の機種へ「鞍替え」するユーザーも現れ始めました。
休刊の1年前より出版界異例の「休刊カウントダウン」が行われる中、MファンはMSXに関するサークルや同好会の紹介を掲載し始め、アマチュアコミュニティへの誘導を行いました。その結果、同誌の休刊後も全国各地で群発的にMSXオンリーのイベントやオフ会が開催される運びとなりました。
当クラブ(Gigamix)は元々MSX専用パソコン通信ネットワーク「ザ・リンクス(The LINKS)」の或るBBSに参加するネットワーカーで構成されていました。この頃はパソコン通信というローカルネットワークが点在してはいたもののインターネットは家庭に普及していませんでした。Mファンの休刊とともにネット(パソコン通信)とリアルの垣根を越えてクラブ連携が活性化し、当クラブも連携して各地でイベントへ出展参加して、ユーザーさんと親交を深めることとなります。
そんな中、東京のMSX系クラブ「PCCM」さんが、MSXで利用できる4ポートのマルチタップ「忍者タップ」を開発しました。いわゆる「同人ハードウェア」です。「忍者タップ」はハードウェアは完成したものの対応ソフトウェアはこれから拡充、という状態でした。ハードがあってもソフトが無ければ意味がないわけで、当クラブは「忍者タップ」対応のパーティーゲームを作ることにしました(前作の「マジカルラビリンス」)。
リアルタイムで4人同時プレイできるゲームは当時のMSXではたいへん珍しく、好評でした。とは言え、これは人間4人でプレイすること前提で組まれているため、4人揃わないとプレイヤーの一つや二つがまったく動かなくて面白さに欠けることが度々指摘されました。
そこで、コンピュータの思考ルーチンを追加し、ゲームシステムをブラッシュアップしたうえで一人用モードを追加した続編(今作「マジカルラビリンスRemix」)を制作しました。これはイベント会場でパーティーゲームとして活用され、けっきょく700本くらい流通しました。現在でも古参のMSXユーザーが知っているかもしれない「マジラビ」とは、今作の「Remix」のほうかと思います。
「MSX・FAN」が遺したもの
1995年のMファン休刊以後は企業主体ではなくアマチュアユーザー主体の活動へつながってゆきます。「忍者タップ」が1996年、当クラブの「マジラビRemix」が1997年です。
その後ユーザー主催の定例イベントを経たのち企業からリリースされた2大プロダクツ…2002年のMSXPLAYer(ソフトウェアエミュレータ)、2006年の1chipMSX(ハードウェアエミュレータ)は、そのアマチュア活動の一部が結実したものです。
この記事を書いているのは2020年ですが、2020年のMSXシーンは1周廻って「MSXがいま熱い」と言わんばかりの活況ぶりです。高速かつ高性能な開発ツールが整備、フリーのCAD・3DプリンタやFPGA等を用いた小規模生産体制が確立。そしてスマートデバイスでのコンテンツ再生環境。ソフトウェア開発もハードウェア設計も昔に比べ圧倒的に省力化されました。また、旧来のMSXユーザーが加齢して本業や子育ての忙殺から解放されつつあります。かくして、国内・海外問わずMSXのROMカートリッジを自ら生産する人が後を絶たない状態になりました。
MSX規格を提唱していたアスキーは市場の縮小により早々にMSXマガジンの休刊を決め、兼ねてからアマチュア作家のコンテンツ(ファンダム、AVフォーラム、FM音楽館、ほほ梅麿のCG等)を多数掲載してコミュニティの維持に奮闘していたMSX・FAN誌が最後の最後で個人の力に委ねる流れを作った流れがあったおかげで、今の活況ぶりがあるのではないかと私は思ったりして感慨深くなります。