昨日(2024年6月5日)大きな動きがあったので、取り急ぎ記事化しました。
MSXのシステムBIOS・システムソフトウェア
米マイクロソフト社が絡むもの
- 西和彦さん(@nishikazuhiko)の会社であるMSXライセンシングコーポレーション(MSX Licensing Corporation)が、米マイクロソフト社とMSXに関するライセンス契約およびロイヤリティ契約を締結している(と言っている)
- 西さんが「MSX BASICに関するライセンス」というツイートをわざわざつぶやいているので、少なくともMSX BASIC(=BIOSのメインROM・サブROMの一部ないし全部)に関しては2024年現在でも米マイクロソフト社が今なお著作権を所有する部分が存在するものと考えられる
- 米マイクロソフト社と契約を締結するのだから、西さんの会社がMSXのシステムBIOSの著作権を全て保有しているわけでは無い(現在でも米マイクロソフト社が一部ないし全部の著作権を保有している)可能性が高い
- 米マイクロソフト社の著作権表示があるMSX-DOS(1)のシステムファイルについても、MSX BASICと同様に2024年現在でも米マイクロソフト社が一部ないし全部の著作権を保有している可能性が高い
- MSX以外のレトロPCについても、米マイクロソフト社の著作権表示がある場合は同様に2024年現在でも米マイクロソフト社が一部ないし全部の著作権を保有している可能性が高い
- 西さんの会社はMSXのシステムBIOSを利用してビジネスを展開できる「ライセンサー」ではあるが、西さんの会社が全てのシステムBIOSの著作権を保有していないと仮定すれば、システムBIOSを自由化する判断をできるわけがない
- MSX以外のレトロPCについても、2024年現在では西さんの会社が米マイクロソフト社の著作権表示があるシステムソフトウェアのライセンサーとなっている可能性が高い(2024年5月18日発表「PasocomMini PC-8801mkIISR」)
- 西さんの会社がMSXのシステムBIOSのライセンスを独占できるわけではない(と言っている)
絡まないもの
- かつてアスキー社が保有していたMSXに関する全ての権利は西さんの会社が保有している(と言っている)
- 米マイクロソフト社が関与していない(アスキー社のみで開発された)システムBIOSについては、西さんの会社が著作権を所有している可能性が高い(MSX-MUSIC、MSX-DOS2、漢字BASIC等)
MSXの商標
- 「MSX」及び「MSX」のロゴマークは、西さんの会社 MSXライセンシングコーポレーション が商標を保有している(区分06・09・16等)
- 「べーしっ君」及び「べーしっ君」のロゴマークも、西さんの会社が商標を保有している(区分06・09・16等)
ユーザーができること・できないこと
- パッケージ・ダウンロードを問わず、MSX関連のソフトウェアは誰でも自由に公開・販売しても良い
- ただし、システムBIOSを含むソフトウェア(エミュレータ同梱等)においては西さんの会社からライセンスを取得する必要がある
- MSX-DOS(1)を自ソフトウェアに組み込んで自由に公開・販売することはできない(ライセンスを取得する必要がある)
- MSX-Cについては、一部の条件においてCコンパイルした成果物を公開・販売しても良い(過去にはアスキー社とのライセンスが必要だった)
- MSXロゴは、動作するソフトウェアに限り自由に使用できる
- グッズ販売など非ソフトウェアの商品は、ライセンスを取得する必要がある
- MSXに関する制作物には「'MSX' is a trademark of the MSX Licensing Corporation.」を記すことが必要かもしれない(必須ではないがプロジェクトEGGや公式ライセンスグッズでは少なくともそうしている)
調査の履歴
MSXシステムBIOSの所有者は誰なのか
2024年現在、MSXの各種システムBIOSは、元アスキー創業者の西和彦さんが設立した「MSXライセンシングコーポレーション」が米マイクロソフト社からライセンスを取得して運用しているようです。
また、2024年6月5日、西さんから新たに次のコメントが発表されました。
西 和彦 Kazuhiko Nishi @nishikazuhiko
お知らせ
ソフト関係の会社からクレームがありましたので ご説明させていただきたいと思います
MSXライセンシング会社はD4E社にMSX関連のゲームのネットワーク販売のライセンス(ゲームと一緒にMSXのシステムソフトをバンドルすること)を与えておりますが、これは独占ではなく、非独占です そのほかのMSX関連のソフトの販売は、パッケージ、ダウンロードを問わずまったくの自由で、いかなる個人、法人にも独占的な権利を付与したことはありませんし、これからもあり得ません ゲームでもアプリでも販売はまったく自由です それがパソコンの世界です
また、MSXロゴの使用はソフトが動くということの表示なので、動かないソフトにロゴを使用することはできません ブローカー的な会社や人物にそういうことを言われた場合に、直ちに西和彦までご通報をお願いします
午後5:54 · 2024年6月5日
MSXの商標・ロゴの使用に関する調査
MSXに関する商標やロゴマークは、2024年現在は西さんの会社・MSXライセンシングコーポレーションの商標登録とされています。かつてアスキーが保有していたMSXに関する商標は全てMSXライセンシングコーポレーションへ移管されています。
などなど…
前述の通り「MSXロゴの使用はソフトが動くということの表示なので、動かないソフトにロゴを使用することはできません」という条件がありますので、ソフトウェア販売ではない商品(いわゆるグッズ販売の類)に関してはライセンスの取得が必要と考えられます。
商標の明記やロゴの使用許諾については、パートナー契約をすると無料で記述できる権利が得られたり、契約して有償で記述したり、契約しなくても記述すれば黙認されることもあり…商習慣でケースバイケースなので一概には言えません。が、2024年においても無断で使用できるものではないのは明白です。
MSX-DOSの組み込みに関する調査
HRA!さん制作のMSX用ゲームソフト「Rabbit Adventure」の体験版はROM形式(ROMイメージ)で提供されていましたが、今夏発売予定の「MSX0 Stack(プレビュー版)」はディスクイメージのみ対応なのでこのままでは遊ぶことができません。そこでHRA!さん自身がMSX-DOS用のアプリとしてリメイクするも、DOSのシステムファイル(MSXDOS.SYS および COMMAND.COM)の配布ライセンスが不明なため公開を躊躇していたところ…西和彦さんがtwitterで直接配布許可を出したため、MSX-DOSを含んだコンテンツの無料公開が可能となりました。
が、念のため付け加えておくならば、今回の体験版(無料公開)では許可が下りましたが、価格設定したうえで「Rabbit Adventure」フロッピーディスク版(製品版)の販売に対して許可が下りるかは別問題ということです。無料配布のコンテンツだったから下りたのかもしれませんし、MSX0 Stackに向けたプロモーションの要素も含まれていたのかもしれません。
とは言え、X(旧twitter)で西さん(@nishikazuhiko)へ直接聞けばライセンスが取得できるのかもしれません。すこぶる簡単!?
MSX以外のレトロPCに関する調査
MSX以外のレトロPCについても、2024年現在では西さんの会社が米マイクロソフト社の著作権表示があるシステムソフトウェアのライセンサーとなっている可能性が高いです。
2024年5月18日に発表された「PasocomMini PC-8801mkIISR」では、NECのレトロPC(非MSX)なのに西さんの会社のコピーライトも表示されています。PC-8801mkIISRの実機にはMicrosoft BASICと同じ言語体系である「N-BASIC」および「N88-BASIC」が搭載されています。