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あんなに普及しているのに意外と知らないですよね。Pana Amusement Cartridge(PAC)のSRAMについて…
「PAC対応」というフレーズだけ聞くと「FMPACのFM音源に対応している」という印象を受けるMSXユーザーも多いと聞きます。この記事はFM音源の有無ではなく「PACのSRAMバックアップ機能」に関する各種ソフトウェアの対応状況を調査しています。
- PACとは
- 技術的な特徴
- 対応ハードウェア
- 対応ソフトウェア
- 非対応ソフトウェア
- ほかにもPACのSRAM対応ソフトがあるかも!?
- PACの代替として使える互換品
- PACのSRAM活用例
- こぼれ話
- 当ページの過去更新履歴
- 情報源
PACとは
- Pana Amusement Cartridgeの略称
- 書き換え・長期保存可能な総容量 8KBのバッテリーバックアップメモリ(SRAM)がMSX用カートリッジの形状で提供されたもの
- 主にゲームソフトのセーブデータ保存目的で用いられる
- カートリッジ内にボタン型電池が装着されており、この電力によってSRAMのデータ保持が可能になっている
- MSXパソコンを数多く生産していた松下電器(現・パナソニック)の製品だが、MSXの規格としては制定されていない 、松下電器の独自商品である
- 中小規模のソフトメーカーがPACのSRAM対応ソフトをリリースしていたが、ソニーやサンヨーなど松下以外のハードメーカーがPACに対して後追い対応することは無かった
PACのSRAMバックアップシステムに対応しているハードウェアおよびソフトウェアには、このロゴマークが掲示されていることがあります。
技術的な特徴
- 1ブロック 1024バイト(1KB)とし、計8ブロックのリード・ライトが可能(8ブロック目だけ1022バイトに減る)
- ブロックと言いながら、セグメントの概念は無い。メモリは8KB連続しており、ブロックの途中アクセスやブロックをまたいだ連続アクセスも可能
- ファイルシステムやコンフリクト保護機能、暗号化機能などのデータ管理機構は一切無い
- 他アプリとの使用ブロック競合を避けたりする管理フローも仕様もおそらく存在しない
- 自ソフトの使用区分は自前で検索処理が必要
↓ 詳しい技術情報は以下の記事にまとめました。 ↓
対応ハードウェア
データのバックアップに対応するMSX用カートリッジ。
ソフト名 | 規格 | 備考 |
---|---|---|
Pana Amusement Cartridge | MSX1 | 初の製品 |
FM Pana Amusement Cartridge | MSX1 | FM音源(MSX-MUSIC)内蔵の強化品 |
esePana Amusement Cartridge | MSX1 | FRAM使用の互換品 |
MSXπ+PACファームウェア | MSX1 | Raspberry Pi使用の互換品 |
MSX Pico | MSX1 | Raspberry Pi使用の互換品 |
Carnivore2 | MSX1 | CompactFlash利用可能の互換品 |
Game Master 2 + PAC | MSX1 | PAC+新10倍カートリッジの互換品 |
近年になって互換品がリリースされています。互換品は記事の後方でご紹介しています。
純正品①:Pana Amesement Cartridge(PAC)
始祖となる、松下電器製のSRAMバッテリーバックアップカートリッジ。型番:SW-M001。ビデオゲームの進捗(ゲームデータ)を保存するためのソリューションとしてSRAMによるバッテリーバックアップという技術が'80年代に生まれたのですが、カートリッジ内の部品点数増加に伴う製造コストの上昇が中小企業のゲームメーカーの間で課題となっていました。
そこで松下電器が旗振り役となりPACを開発・発売、ゲームのセーブデータはここに保存できる!と各ソフトメーカーへ打診した結果、多くの対応ソフトが発売されることになりました。
純正品②:FM Pana Amesement Cartridge(FMPAC)
PACのSRAM機能とFM音源が同時に利用できる、松下電器製のマルチカートリッジ。型番:SW-M004。FM音源部分は「MSX-MUSIC」というMSXの規格として正式に策定され、他のハードメーカー・ソフトメーカーもFM音源の対応に追随しました。
当時のMSXユーザーにとって夢のFM音源が安価で入手できるとあって、PACというよりはFM音源欲しさでバカ売れしました。まぁそのおかげでPACのSRAM機能も普及したと言えるのですが…
そういや浅倉大介氏が「アシュギーネ」シリーズで作曲したBGMがPACのサンプル曲にも採用されていましたね。
参考:似て非なるもの
ソフト名 | 規格 | 備考 |
---|---|---|
The Monster Sound FM PAQ lite | MSX1 | SRAM非搭載 |
対応ソフトウェア
PACのSRAM対応の旨がパッケージに記載されているものを中心にリストアップしました。
対応ソフトウェア(審議中)
ネットの検索だけではよく分からなかったソフトウェア。情報をお待ちしております。
ソフト名 | 規格 | 備考 |
---|---|---|
幻影都市(イリュージョン・シティ) | MSXTR | 言及 |
ガウディ バルセロナの風 | MSX2 | |
琥珀色の遺言 | MSX2 | 言及 |
シードオブドラゴン | MSXTR | |
スターシップランデブー | MSX2 | 言及 |
SQUEEK | MSX2 | PACでなく新10倍に対応? |
非対応ソフトウェア
PACのSRAM対応と予想されたがその後非対応と判明したソフト。
ソフト名 | 規格 | 備考 |
---|---|---|
あかんべドラゴン | MSX2 | 言及 |
三國志II | MSX2 | 言及 |
大航海時代 | MSX2 | 言及 |
提督の決断 | MSX2 | 言及 |
信長の野望 武将風雲録 | MSX2 | 言及 |
ハイデッガー | MSX2 | 言及 |
マスターオブモンスターズ | MSX2 | 言及 |
ヨーロッパ戦線 | MSX2 | 言及 |
光栄の歴史シミュレーションゲームについて、ROM版とFD版の両方が発売されている場合はROM版がPACに対応(FD版は非対応)。
ただし、ROM版でもカートリッジ内蔵SRAMの容量が256キロビット(=32KB)のソフトウェアはPACに非対応。パッケージに「256K S-RAM」と書かれていることもあります。
ほかにもPACのSRAM対応ソフトがあるかも!?
パソコン雑誌の投稿プログラム系統
MSX・FAN 1998年3月号に、PACをハックする記事とソースコードが掲載されているようです。草薙さんの投稿プログラム「LAST WAR」のように、MSX・FANやその他パソコン雑誌でもPACのSRAMに対応した投稿プログラムが存在したかもしれませんね。
同人ソフトのミドルウェア系統
主に'90年代のMSX用同人ソフトの開発に用いられていたミドルウェア(拡張BASIC)に、PACへのアクセス機能を持ったものがいくつか存在していました。それらを採用した同人ソフトなどにもPACのSRAMに対応したものがありそうな予感…
PACの代替として使える互換品
中古で探すしかないPACの純正品の代わりに!2010年以降新たに製造された、PACのSRAM機能と互換性があるカートリッジをご紹介します。
互換品①:MSX esePana Amusement Cartridge
SRAMでなくFRAMを採用。電池切れでデータが消去される心配がありません!これは安心。
↓ 通販サイトはこちら ↓ www.kadenken.com
たまに再販されるらしいレアモノ。
互換品②:MSXπ(MSX Pi)+PACファームウェア
Raspberry Piを搭載できる多機能カートリッジ『MSXπ(MSX Pi)』にPACをエミュレーションするファームウェアを書き込むことで、PACの互換品として利用することが可能。
↓ 通販サイトはこちら ↓
https://auctions.yahoo.co.jp/seller/mottann29auctions.yahoo.co.jp
カートリッジ基板はヤフオクで買える!半田付けの経験がそれなりに必要。
GitHubからPACのファームウェアをダウンロードし、MSXπに書き込んでください。
互換品③:MSX Pico
Raspberry Piを搭載した多機能カートリッジ。PACのSRAMバックアップ機能もエミュレーションできるので、PACの互換品として利用することが可能。
↓ MSX Pico のGitHubはこちら ↓ github.com
互換品④:Carnivore2
CompactFlashスロットによる2GBもの大容量ストレージドライブに加え1MバイトのRAM増設、SCC音源(互換品)とFMPAC(互換品)も追加される、多機能なカートリッジ。FMPACとの互換ということで、MSX-MUSICのFM音源機能に対応したうえでPAC機能にも対応します。しかもMSX1から動作可能なので、このカートリッジを一つ持っているとMSXをいじるうえでとても便利になります。
ただし、工場出荷時はPAC機能が限定されていて、純正品のようには快適に使えません。基板にCR2023等のバックアップ電源を接続することでPAC部分のバッテリーバックアップが可能となります。便利にはなるのですがマシンとの相性問題や著作権の問題など諸問題が報告されている癖の強いカートリッジなので、取り扱いにくれぐれもご注意ください。
↓ 通販サイトはこちら ↓ www.8bits4ever.net
Carnivore2の詳細な仕様は、GitHub上に記されています。
互換品⑤:Game Master 2 + PAC
ネット上にほとんど情報が上がっていない、コナミの「新10倍カートリッジ」とPACを同時利用できるという、謎の一品。MSXにおいてこの2つがセットになっているのなら最強です!
ちなみに、大手ゲームメーカーのコナミは、独自のSRAMバッテリーバックアップカートリッジ「コナミのゲームを10倍楽しむカートリッジ」「コナミの新10倍カートリッジ」および独自の音源「SCC」を採用しており、PACおよびMSX-MUSICに関与することはありませんでした(唯一の例外が、MSX2+のローンチタイトルとして発売された「F-1スピリット 3Dスペシャル」でFM音源が使用されました)。
↓ 通販サイトはこちら ↓ www.ebsoft.fr
PACのSRAM活用例
なんでもSRAMセーバー
MSX turbo Rの規格で廃止されたカセットテープ用BIOSルーチンをエミュレートし、ゲームデータのロード・セーブをカセットテープからPACへ代用するという凄く強引なツール。
↓ Webサイトはこちら ↓
開発向け:PACへ対応するためのライブラリ
Pana Amusement CartridgeのSRAMアクセスに対応している、開発用ライブラリ。
ソフト名 | 規格 | プラットフォーム | 概要 |
---|---|---|---|
PAC Saver ver.1.05 | MSX1 | MSX-DOS | PACへの読み書き。Apache License 2.0 |
M.K BASIC ver.0.5以降 | MSX2 | MSX BASIC | PACへの読み書き。拡張BASICを利用 |
DMシステム2 | MSX2 | MSX BASIC | PACへの読み書き。組み込みライセンス有 |
PAC Saver
PAC Saverは、MSX-DOS用の外部コマンドです。DOSでPACのSRAMへの読み書きが可能です。ソースリストも付いてきます。
↓ Pac Saverのダウンロードはこちら ↓ www.yo.rim.or.jp
PAC Saverが、2023年10月2日に Apache License 2.0 となりました。
DMシステム2
当クラブでリリースするMSX用ミドルウェア「DMシステム2」では、PACへのアクセス機能を拡張BASICで提供しております。
↓ DMシステム2のWebサイトはこちら ↓ www.gigamix.jp
PACは8ブロック目だけ終端2バイトが利用できない
8ブロック目だけ容量が1022バイトなのでご注意を。
こぼれ話
ハイドライド3のためにPACを買った人が多かった説
意外!そうなの!?
フリー素材(!?)
私が見様見真似で作成した300dpi横100mmサイズのPNG画像はこちら → https://p.gigamix.jp/devmsx/cg/pac-sram_logo_300dpi_w100mm.png
当ページの過去更新履歴
【2024.01.14更新】 PACの互換品を更に2品追加
【2024.01.11更新】 PACの互換品に関する紹介を追加
【2023.10.01更新】 初版公開
情報源
皆さまありがとうございます。