意外と知られていない(どうでもいい)知識。「MSXView付属 漢字ROMカートリッジ」という便利なカートリッジがあるのをご存知でしょうか。
- MSXView付属 漢字ROMカートリッジとは
- 対応しているアプリ
- 対応していないアプリ
- 漢字ROMを搭載しないMSX2で特に便利に機能します
- カートリッジの互換品を自作する
- ドキュメント
- なぜ小さな文字フォントが作られたのか
- MSX1の場合は8×8pxのフォントも有益
MSXView付属 漢字ROMカートリッジとは
- MSX turbo R専用GUI「MSXView」の画面表示に用いられる、専用の漢字フォントを搭載しているROMカートリッジです。
- FS-A1GTにはこのROMが本体に内蔵されています。
- 「横12×縦12px」と「横12×縦8px」の、2種類のフォントが含まれています。MSXの標準漢字ROM(16×16px)よりも面積が小さく、解像度の低いMSXの画面表示にもやさしい文字デザインです。
- JIS規格(JIS X 0208:1983)の第1水準漢字に準拠しています。さらに12×12pxのフォントは第2水準漢字も搭載しています。
- MSXView付属 漢字ROMカートリッジは、単なるASCII 8KタイプのメガROMカートリッジです。プログラムの類は入っていないため、MSXViewを利用しなくてもROMカートリッジ単体はMSX1から接続可能で、この漢字フォントに対応する各種アプリで日本語表示に活かすことができます。
- MSXView付属 漢字ROMカートリッジは、MSXの標準漢字ROMとは全く違うものです。ハードウェアの互換性は全くありません。よって漢字BASIC(CALL KANJIで始めるMSX漢字ドライバ拡張BASIC)や「要・漢字ROM」を謳う各種アプリに対しては無効です。
SCREEN 5相当の解像度で「MSXの標準漢字ROM」と「MSXView 専用漢字ROM(通称:Viewフォント)」を比較してみると、Viewフォントのほうが少ない面積でより多くの情報を表示できています。ViewフォントはまさにMSXで日本語の文字を大量に表示するために用意された便利なフォントなのです。
対応しているアプリ
とりあえずまとめてはみたものの、1990年代のパソコン通信時代に公開されていた当該アプリのアーカイブを私は所有していますが、2021年現在インターネットでは入手できないものも含まれています。まずは対応アプリの紹介を優先します。他にもありましたらぜひ情報をお寄せください。
アプリの配布については、当サイトで転載できるものは進め、転載条件を満たさないものを作者の意向を無視してまで転載することはしません。作者さんとの連絡手段構築と権利調整は並行して進めます。
MM
言わずと知れた、MSXフリーク必携の多機能ファイラー(ファイルマネージャー)アプリ。UIやテキストファイルの表示に用いられます。
ソフト名 | MM version 2.07 |
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概要 | ![]() |
対応OS | MSX-DOS2/Nextor |
対応フォント | 12×8px |
作者 | MOGU |
リソース |
当クラブのMM配布ページ https://www.gigamix.jp/multimente/
MSX Resource Center https://www.msx.org/ MSX・FAN 付録ディスク Networker's Gift Disk(NGD) |
MMの配布条件の確認
別ページにまとめました。
とは言え事後報告はしたい。作者のMOGUさんは何処…もしこれを見ていたらご連絡をお待ちしております。→ https://twitter.com/nf_ban or nf_ban@gigamix.jp
PMM
PMA・LZHアーカイブ管理アプリ。UIやテキストファイルの表示に用いられます。
ソフト名 | PMM version 2.00 |
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概要 | ![]() |
対応OS | MSX-DOS2/Nextor |
対応フォント | 12×8px |
作者 | いーた |
リソース |
MSXフリーソフトウェア100選 http://msx.jpn.org/tagoo/s_check.cgi?LINE=1843 ※旧版(v1.09)
MSX・FAN 付録ディスク Networker's Gift Disk(NGD) 【参考】いーたさんのWebページ http://www.ruiji.net/msx/ (Internet Archive) |
PMMの配布条件の確認
PMMの配布条件は「作者に無断でパソコン通信以外のメディアへの転載は禁止」とあります。過去にはいーたさん自身がWebでLZHアーカイブ(pmm200i.lzh)を配布していたようですが2021年現在は入手不能となっています。
作者のいーたさんは何処…もしこれを見ていたらご連絡をお待ちしております。→ https://twitter.com/nf_ban or nf_ban@gigamix.jp
MGSEL
MGSDRV公式の音楽再生アプリ。ROMカートリッジがスロット2にあると文字化けするバグが混入されているので要注意。
ソフト名 | MGSEL version 3.01v |
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概要 | ![]() |
対応OS | MSX-DOS2/Nextor |
対応フォント | 12×8px |
作者 | Ain/Gigamix |
リソース |
MGSDRVのページ https://www.gigamix.jp/mgsdrv/
MSX・FAN 付録ディスク |
MGSELは、MGSDRVのページよりダウンロードできます。→ https://www.gigamix.jp/mgsdrv/
KID(パッチを当てる)
アスキー製テキストエディタ「KID」をViewフォントに対応。かつ、ノンインターレース化や諸機能を追加するパッチプログラム。
ソフト名 | KIDpat version 2.10 |
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概要 | ![]() |
対応OS | MSX-DOS2/Nextor |
対応フォント | 12×8px |
作者 | なむ(Numsoft) |
リソース | なし |
KIDpatの配布条件の確認
KIDpatの配布条件は、「転載可(連絡してね)」とあります。ただ…転載したいんですが連絡先が分からないんですよ。
作者のなむさんは何処…もしこれを見ていたらご連絡をお待ちしております。→ https://twitter.com/nf_ban or nf_ban@gigamix.jp
ZeroType
非常に高速に動作する、テキストビュアーです。にがさんの「電子工作室」WebページにViewフォント対応と書いてありましたので試してみたところ、/M0 オプションの適用でViewフォント対応となるようです。オプション無しでは通常の漢字ROMです。
ソフト名 | Zero Type version 0.50 |
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概要 | ![]() |
対応OS | MSX-DOS2/Nextor |
対応フォント | 12×8px |
作者 | A to C |
リソース | A to Cさんのページ http://www.yo.rim.or.jp/~anaka/AtoC/programs/msx32.htm |
ZeroTypeははA to CさんのMSX資料室よりダウンロードできます。→ http://www.yo.rim.or.jp/~anaka/AtoC/programs/msx32.htm
DMシステム2
MSX-BASIC上でViewフォントを表示できるシステムです。
- 利用可能フォント:12×12px
- 入手先:DMシステム2のページ https://www.gigamix.jp/ds2/
これだけ8×12pxフォントでなく、12×12pxフォントに対応。
対応していないアプリ
MPX
MPXで利用できる漢字フォントはMSX標準漢字ROMのみ、となります。
もしかするとMSXViewではなくJIS第2水準の漢字ROMが表示されないことに対して、だったのかもしれないけど…
漢字ROMを搭載しないMSX2で特に便利に機能します
かつてFS-A1やHB-F1などの低価格な機種を筆頭に「漢字ROMもFDDも搭載しないほぼゲーム用途専門のMSX2」が数多く普及しました。その後FDD搭載機やMSX2+→turbo R規格の機種が発売されたので利用頻度や存在価値がどんどん下がっていったのですが、近年発売された多機能カートリッジの登場により、当時は非力だの最低スペックだのと揶揄されていたこれらの機種が再活用される流れが生まれています。
そういった非力な機種のオーナーさんへの補助機能としてMSXView付属 漢字カートリッジは便利です。本体に漢字ROMが搭載されていなくてもMSXViewのカートリッジがあればMMで日本語表示が可能になるので、ファイルの整理作業が捗るからです。
そして今回取り上げた各種アプリはファイラーMMを主軸にして関連付けることで、ファイル管理、アーカイブ管理、テキストファイルの閲覧と編集といった処理が漢字ROMの非搭載機種でも可能になり、日本語に関しては割となんとかなるようになります(2021年現在、漢字ROMの機能を実装する多機能カートリッジは存在しません)。
なお2021年現在においては、当時発売されていた漢字ROMカートリッジを探すよりも似非RAMで互換カートリッジを自作するほうがてっとり早い場合があります。
カートリッジの互換品を自作する
フリーフォントの「要町フォント」を採用した「MSXViewの漢字ROMカートリッジと互換性があるROMイメージ」が公開されています。「要町 as MSX-View」と言います。
「要町フォント」自体はX68000のディスクマガジン「満開倶楽部」で利用されていた12px角のビットマップフォントで、それをDOS/Vパソコンの日本語表示システム「FONTX」の仕様に変換されたフォントデータからMSXViewと互換性のある形へ加工されて「要町 as MSX-View」が製作されました。このROMイメージを各種MSXエミュレータのスロットへ配置することで、エミュレータ上でもViewフォント対応アプリが利用できるようになっていました。
そして、その「要町 as MSX-View」のROMイメージを各種似非RAMカートリッジへインストールすることで、実機で利用できるMSXViewの互換カートリッジを自作することができます。
似非RAMの技術が発表された90年代当時は市販のMSX用ゲームカートリッジを改造して製作するのが定番で、その電子工作に特化したミーティングも開催されていました。しかし、2021年現在ではアキバのお店で買うことができるようになりましたので、いい時代になりました。
「要町 as MSX-View」はA to CさんのMSX資料室よりダウンロードできます。→ http://www.yo.rim.or.jp/~anaka/AtoC/labo/labo32.htm
「要町フォント」はVevtorよりダウンロードできます。→https://www.vector.co.jp/soft/data/writing/se002908.html
要町フォントの注意点として、文字のデザインが12px角ギチギチに詰まってる感があります。隣の文字と区別するために1px空ける(実質11px角にする)ようなケアはされていません。また、12×8フォントは12px角から縦に4px分圧縮して製作されたようで、標準漢字ROMから圧縮したような文字のデザインに近くなっています。
ドキュメント
当時のパソコン通信でViewフォントの解析資料が公開されたことで、MSX系のフリーソフト作家がViewフォントに対応する動きにつながりました。MSXでパソコン通信を行う多くがturbo R規格、とりわけFS-A1GTユーザーが多かったことも要因の一つかもしれません。
2021年現在、「要町 as MSX-View」作者のAtoCさんによる技術資料「Let's use "MSX-View付属ROM" 第六版」がMSX資料室入手できます。→ http://www.yo.rim.or.jp/~anaka/AtoC/labo/labo32.htm
なぜ小さな文字フォントが作られたのか
MSXの画面解像度は90年代当時の他機種と比較して決して広いとは言えないものでした。当時の一般的な日本語表示環境をMSXのような狭い解像度で実現するには、けっきょくのところ表示する文字の大きさを小さくしなければならないということが、小さなフォントが用意された経緯の結論でした。
当時の一般的な漢字ROMは16px角、他機種の一般的な解像度は横640px×縦400px(PC-9801)や640×480px(いわゆるVGA)でしたので、全角文字で横40文字(縦は20~25行程度)という画面構成が当時の日本語表示環境の最低条件と考えられていました。ビジネスシーンは勿論のこと、パソコン通信においても全角横40文字のターミナル画面がデファクトスタンダードであり、横36~38文字付近で強制的に改行を入れて折り返すようなテキストコンテンツが多数ありました。
NEC PC-9801用「一太郎」(画像引用元:Wikipedia)
対してMSXは、MSX2の高解像度モード(SCREEN6・7)ですら横512×縦212pxであり、解像度が足りていません(インターレースモードは割愛します)。16px角の漢字ROMをそのまま使用すると以下のように画面を大きな文字で埋め尽くされてしまい、多くの文字情報を表示できません。
文字を小さな面積で表示するには任意のドットラインを間引いたり2ラインを1ラインにOR合成したりしながら表示面積を縮小する(ドットを減らす)必要があります。そうすると文字が小さくなればなるほど文字の線があやふや・太くなりがちで、文字の可読性が下がってしまいます。下の画面は、16px角の漢字ROMをOR合成で12×8pxに縮小処理された文字を用いてテキスト表示したものです。
Viewフォントは機械的な合成処理がされていない文字デザインであるため、可読性が向上します。特に12×8pxのフォントはSCREEN0・WIDTH80の半角文字(6×8px)を横に2倍角した面積と同等です。つまり12×8pxのViewフォントは、WIDTH80の画質で全角横40文字×縦24行を実現できるポテンシャルがあり、本来の可読性は落としつつも他機種で標準的だった日本語表示環境とほぼ同等の文字数を実現できるメリットがありました。
下の画面は、12×8pxのViewフォントを使用してテキスト表示したものです。
上の画面よりこちらのほうが文字の線が太くなく、文字と文字が詰まった感が少なくなり、すっきりしているように感じませんか?
MSX1の場合は8×8pxのフォントも有益
令和の時代に入るとMSXシーンは「Carnivore2」「MegaFlashSCC+SD」「SD Mapper Megaram」「似非SDisk」といった多機能カートリッジの登場により、今になってMSX1の再活用の動きがにわかに活発化されてきています。
MSX1の画面解像度は横256px×縦192px。MSX2以降のSCREEN5/8と同じ横幅ですがMSX1ではPCG(8×8px毎)によるグラフィック描画が前提なので、MSX1においてはPCG 1文字と同じ面積である8×8pxの日本語フォントが最適です。そう、ハイドライド3(MSX1版)のように…
2021年現在のMSX用途では、8×8pxのフリーフォント「美咲フォント」を採用するアプリケーションが増えています。
MSXのような解像度の低いコンソールでは美咲フォントを利用するのもおすすめです。
美咲フォントのダウンロードはこちら → https://littlelimit.net/misaki.htm