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懐かしの8bitおもちゃPC「MSX」を骨までしゃぶり尽くそう。MSXの最新ニュース、ブログ、自作ソフトの配布など。

中古ゲームソフトの非合法化戦略?

去る6月2日、邦楽CDの逆輸入を防止する改正著作権法 が成立しました。来年1月の施行後は最長7年間、邦楽CDの逆輸入ができなくなり、洋楽CDも国内盤が優先されて海外盤の輸入が妨げられるという、音楽好きの方々には強烈なダメージを与える結果になってしまいました。(なぜって?海外盤だと安くてCDなのに国内盤だと高くてCCCDだったりするからさ!詳しくは 音楽配信メモ さんとこで)

「知的財産立国」を押し進める日本の次のターゲットは、ゲームソフトらしいですよ。で、その会議の議事録を読むと…。

首相官邸「第8回知的財産戦略本部議事録(5.27)」より:

○金子行政改革構造改革特区担当大臣
一言だけ、コンテンツ産業について、今、法律を議論してもらっているんですけれども、この中で、やはりゲームソフトの問題で、中古流通市場がいびつな形なので、産業としてなかなか育っていかないと。これは既存の法律の枠組みでは難しいと思いますので、是非枠を越えて。経産省もこれ受けてくださいよ。経済産業省、おられるかと思いますけれども、是非お願いします。
以上です。

金子大臣、中古ゲームソフトがあるから産業が育たない のですか!?(^^;

中古ゲームが買えなくなる?

知的財産戦略本部」は、日本のコンテンツ産業をどう盛り上げてゆくかを考える内閣直属の委員会でありますが、この金子大臣は「第8回知的財産戦略本部」の会議の中で、最高裁まで争われた 中古ゲームソフト販売は合法とする判決 (その内容) に待ったをかけました。議事録の「既存の法律の枠組みを超えて…」と書かれた考えが具体的に何を指すのかはまだ分かりませんが、最悪の場合、著作権的に中古ゲームソフトの存在を禁止する 動きにまで発展する可能性があります。

「最高裁判決破棄を要求する大臣」より:

最初に言っておくと、これはゲームがどうとか著作権がこうとか言う矮小な話ではありません。「特定の業界が最高裁の司法判断を拒絶すれば、立法勧告が無くとも立法で最高裁判決を破棄出来る」と言う悪しき前例を作るかどうかと言う、法治国家の根幹に関わる重大問題です。或いは、民法第206条を始めとする「所有権絶対の原則」や「財産処分の自由」をことごとく著作権に劣後するものと位置付けて否定し「一切の所有権は出資者に帰属する」ことを標榜するネオ共産主義か。

上のblogで再三「中山先生」と呼ばれている 中山信弘・東大教授 は知的財産法の権威であり、民間人として知的財産戦略本部の委員に名を連ねているにも関わらず、事務局で内密に作成された推進計画案の存在を日経のすっぱ抜き記事で知ったという、知的財産戦略本部の「蚊帳の外」に立たされています(去年5月より)。コンテンツを持つ各業界(ゲーム業界含む)の根回しが着々と進んでいます。

金子大臣は、ゲームショップの大多数は新作ゲームではなく中古の売上で生計を立てていることをご存知なのでしょうか?最悪の場合、中古ゲームの販売が法律的に禁止になったら店は生計立たない→店が潰れる→販路が縮小→ゲーム産業が縮小→知的財産立国を目指す国策が失敗…というシナリオも考えられますが、それには気づかない(振りをしている)んでしょうか?

中古ゲームの販売が法律的に禁止になる…とは大げさにしても、中古ソフトに対してコンテンツホルダーへ売上を還元する制度が固まる可能性は高いでしょう。例えば新作ソフトは3ヶ月間中古にしないとか、新作ソフトの買取りも受け付けないとか…。ただ、これはメーカーと流通との取り決めでやるべきことで、わざわざ著作権法を改正してまでやるべきことではないんじゃないか?と僕は思うわけです。

政治に無関心でいられない時代

このプロジェクトの究極的な目的は、どうも、コンテンツホルダー(出版社・メーカー・ソフトハウス)が中古価格を設定できる 再販価格維持権 という仕組みのようです。中山先生が蚊帳の外というぶっちゃけ有り得ない立場であるのも、それがコンテンツホルダー主導で進められている故のこと。このまえ音楽CDは規制したので、次はゲームソフト、その次は古本…って感じでコンテンツの保護活動は進んでゆくものと思われます。

ちなみにMSX方面に限って言えば、MSXゲームリーダー はユーザーが所有する過去のコンテンツを合法的に再利用できるようにしたプロジェクトですし、プロジェクトEGG に至っては過去のコンテンツに利益が発生し、発売元へ還元されています。せっかく過去のコンテンツを有効に活用しようと試行錯誤が始まったところに、こんな動きも同時に始まっている…。複雑ですね。著作権法改正で EGGのソフトが4,800円(メーカー希望価格&値下げしたら「違法」)になったら誰も買わないですよ!多分!

なので、知的財産戦略本部の計画する法案が相当ヤバかったら絶対に通してはいけません。そのために、消費者(ユーザー)は、知的財産戦略本部の計画をよく見ておく必要があります。

というか、最高裁判例を法改正でひっくり返そうという思考回路が信じられない。はっきり言って、こんなことをやられてはフツーの人(ユーザー)は手も足も出ませんよ。デモ行進やロビー活動に参加すること自体敷居の高い行動なのに、政治家になって反対側に回らなくてはならない…なんてことになれば、もう諦めるしかありません。

政治に無関心でいるといつの間にか不利益を被ってるかもしれない昨今、こちらのサイト でこれら一連の動きを監視していますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。