MSXの規格発表から実に22年、生産終了から10年が経過したこの2005年、一度はPC業界から姿を消した8bitパソコン「MSX」が、ついに(FPGAの皮をかぶって)復活、再生産の道が開けました。5月20日、アスキー のWebサイトにて 1チップMSX予約申込 のコーナーが開設され、Web上で予約が可能となっています。
予約に関する概要は以下の通りです。
- 予価 19,800円 (税抜)
- 先着順で最大10000セットまでの限定生産
- 5000セット以上の予約で生産確定
- 生産が確定次第、購入方法をメールで通知
- 予約受付は5月20日(今日)より8月20日までの3ヶ月間
- 予約はキャンセルが可能
- 1年保証付き
え〜!?1万台しか作らないんですか!? こりゃ、さっさと予約しなければ締め切られてしまう!?
【5.20 13:10更新】ってなわけで、僕はさっそく予約しましたよ。MSX1相当品ですが!
MSX1…相当品!?
今回予約されている「1チップMSX」キットは、FPGAに MSX1相当品 のハードウェアデータがデフォルトインストールされています。「相当品」とあるからには規格外の仕様が存在するということですが、MSX1発表ののちに策定された規格がMSX1へ逆転して盛り込まれているものがほとんどですので、事実上はまったく問題無い(むしろ大歓迎)でしょう。しかし、去年に発表された試作版 に比べ、製品版はいくつかの端子が削られている上、未だ明確にされていない仕様も存在しており、予断を許さない状況です。
「MSX1相当品」としてのスペックは以下の通りです。
- メインRAM 256KB (MSX1は本来64KBまで)
- 漢字ROM (JIS第1・第2サポート?MSX1はオプション)
- MSX-DOS2相当品 (メモリマッパー搭載?MSX1は本来DOS2非対応)
- PS/2端子 (Windows用のキーボードを接続)
- ジョイスティック端子 (ATARI端子は1個?)
- MSXカートリッジスロット 1基 (試作品は2スロットありましたが削除)
- SD/MMCカードスロット (FDDの代替メディア)
- ビデオ端子 (試作機にはS端子もありましたが削除)
- 音声端子2個 (LとRだろうろけど出荷時はモノラル?)
- FPGA入出力ピン
- USB端子 (拡張用, 出荷時は未使用, 端子は1個?)
- VGA端子 (拡張用, 出荷時は未使用?)
この製品は…どうなんですか?
あなたの知らない方が良かった世界「いやぁ、製品意図がうまく伝わってないねぇ」より:で、1チップMSXだけにフォーカスして感想などを読んでみると、製品の意図するところがぜんぜん皆さんに伝わってないですよ!
もうちょっと概念的なところの説明に時間を割いておく必要があったかもしれないですなぁ… >へんしゅうちょ&NASU&おいら
■よくある感想
・MSX1のスペックでこの値段かよ
・2万あったら中古の実機買ったほうがよくね?
・5000台も予約集まるのかよ
いやいや、こういう素直な感想が悪いという事ではなくて、こういう風にしか伝わらなかったということはプレゼン側の問題であって。
西和彦の講演後のQ&Aで具体的な使い方に言及していたのだが、それをもうちょっとわかりやすく書くとこんな感じかな。
■(公表されてるビジョンにおいて)1チップMSXで出来ること
・MSXのハード仕様を自分で改変できる
・開発環境は無償で提供される
・理論上は、MSX2+同等の機能までアップすることができる
・MSXに限らず、様々なハードをこのボード上で実現できる
つまり、スプライトの仕様制限を取り払ったMSX1を実現したり、激速な演算を実現するMSXというのを、ハードウェア上で実現することができるということになるわけで。
仕様の変更できるハードウェアという視点で見てもらえると、少しは可能性に期待を持ってもらえるんじゃないかな。
電子ブロックのすごい版ってことで。
この1チップMSXという製品は「MSX2に拡張可能なMSX1相当品」としての側面が大きくクローズアップされている反面、FPGAのデータを書き換えれば PC-8001 や X1 など MSX以外の昔のパソコン はもちろん、電卓・ラジオ・キッチンタイマーなど パソコンではない何か に自由に変更できるという「自作ハードウェア開発環境」としての側面に関しては、Web上ではあまり語られていない(というか全然話題が挙がらない)ような気がします。そりゃまぁ、MSX以外にも化ける(頑張れば ファミコン も?)…なんてネタは アスキーは絶対に書けないでしょう が、太陽電池の電卓が100円ショップで売られているようなモノに溢れている世の中で暮らしていれば、最近じゃSE・プログラマですらパソコンを組み立てたことが無いなんて話を聞きますから、電子工作なんて行為は普通は好き好んでやりませんよね。
ですが、渦中とも言えるFPGAのコミュニティから、1チップMSXの話題がWeb上でほとんど挙がらないのは何故なんでしょうか?僕は MSX WORLD 2005 のときもやはりそう思いましたが、今回の反響が思ったよりも少ないものと感じています。私たちMSXユーザーは、このブツが理解できるできないのギリギリの線に置かれているかなりエポックメイキングな製品だとおぼろげには認識しているのですが、FPGA界隈の方々にとってはこの製品の存在意義はどのように感じていらっしゃるのでしょうか?
FPGAのコミュニティの総評がぶっちゃけ「端子がいっぱい付いてるFPGAの評価ボード」という認識でも、MSXのコミュニティはそれで構わないのですよ、最低5000の予約が取れれば、生産は確定する のですから。しかしダメ出しはおろか話題にすら上がらないとなると、本当に5000も予約が集まるのか非常に疑わしくなります。
話題が挙がらない原因として考えられる可能性は
のどれか(或いは複数)かなぁ。もっとあるのかもしれませんが。どうなんだろ?識者のどなたか、ぜひ教えて下さい。
無いものは作る!の精神は通じるか
1チップMSX内のMSX1相当品はUSB関連がまるで未実装のようなので、とりあえず現状のスペックで不足している仕様で
このへんの機能の追加あたりが、FPGAに慣れる意味でいじり始める実用的な最初の目標になるんじゃないでしょうか。ただ、言うのは簡単ですけどこれを実際にどうやっていじり始めるのかは、誰かから教わりたい気分でいっぱいですよ。
MSXはこれ以上進化する必要があるのか?という問題はさておき、今後MSXのコミュニティで1チップMSXをベースにした新しい規格「俺MSX」がいろんな人から提案されるような状況になるためには、昔やってたような 似非セミナー のような場が必要かもしれませんが、やはりFPGAのコミュニティとのコラボレーションなしには到底実現しないと思います。
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